2023年3月末を持って最終回を迎えた「舞いあがれ!」、非常に楽しませてくれたドラマでしたがどうやら一部の界隈で「不評」だったらしいです。特にラストにかけての視聴率の低下が著しく、最終回直前ではかなりの低下があったとのこと。個人的には後半にかけてどんどん面白くなっていった印象だったので、さて、世の中ではどのような評価かなと思ってみたところ某感想を書く場所では大荒れのようです。どうしてこうなった。。。と思いながらもそこはいつも大荒れな気もするのですが、書いている内容が気になったので考えてみました。
「舞いあがれ!」はDAO(分散型自律組織)を具体化した物語
DAO、という言葉を観て「はてな?」となってしまう方はこの「舞いあがれ!」というドラマに違和感を覚えたのではないでしょうか。
ざっくりあらすじを追ってみると
- 1東大阪に暮らす病弱な主人公、舞が元気になるきっかけになる五島での婆ちゃんとの生活
- 2五島での出会いと空への想いが募る舞
- 3飛行機に憧れ、夢を追いかけながら工場の社長を続ける父と飛行機作りに憧れる舞
- 4大学生になった舞は突如人力飛行機のパイロットに
- 5みんなの夢を背負って努力する舞、チームでの努力
- 6人力飛行機で空を飛んだことで、本当のパイロットに憧れる舞
- 7航空学校で勉学、チームの大切さ、恋愛、努力の結果試験合格と内定
- 8リーマンショックにより就職延期、その間に倒れた父。仕事の手伝いを開始する舞
- 9窮地に立たされる工場、最悪なタイミングで父が過労死
- 10工場を立て直す決意をする舞と母
- 11新しい仕事をなんとか成功させ、軌道に乗る
- 12軌道に乗った工場を更に発展させるため新しい領域、父が憧れた「航空機」に関わっていく
- 13家族間でなんやかんやトラブルがありながらも幼なじみと結ばれる舞
- 14地元を盛り上げるためにオープンファクトリーを主催する舞
- 15オープンファクトリーをきっかけに地域の強みを活かし、共創することを新事業として独立する。なんやかんやあり舞の娘誕生。
- 16婆ちゃんが倒れ、五島へ迎えに。ともに東大阪で生活することになりながら独立した仕事に従事する舞
- 17過去に出会ってきた人たちと一緒に仕事をする中で、大学時代の人力飛行機との縁で「空飛ぶクルマ」に関わる舞
- 18舞いあがれ。紆余曲折ありながらも空を飛ぶ舞
端折りましたが、「舞いあがれ!」というタイトルとおり最終的に空を飛ぶ舞はかなり苦労しながら、努力や絆の結果成長を続けていく物語ではあるのですが。。。
どうやらこの「紆余曲折」の部分がご都合主義と捉える方が多いようです。
また、パイロットを目指してそのまま「機長になる舞」をイメージした視聴者も居たようで、工場の立て直しや独立したりすることが「この主人公はなにがしたいかわからないし、他力本願で、感情移入できない」みたいな感想もちらほらありました。
しかし、この「舞いあがれ!」の面白いところって「主人公が才能に溢れていて閃きによって問題を解決していく」ということではなく「これまで積み重ねてきた信頼と絆によって、様々な変化に対応しながらも問題を解決していく」というところが非常に面白いのですが、どうやらこの部分が不評の要因ではないのか、と思われます。
昨今、ホワイトカラーの企業が当たり前になりつつ、どんどん大手もリストラが増えていく中で「一つの場所に居続けることや変わらないでいることのリスク」について、あちこちで訴えかけられ始めています。大手企業に居座り続けること自体がリスクであり、企業に所属することに依存したとき、その業界にいられない自体に陥ったら、業界や地域そのものが終わってしまったら共倒れするしか無いという当たり前の事実を受け入れられない場合、このドラマは「つまらない」という感想になり、途中で考えを放棄して役者や細かい表現に難癖をつけはじめることになるのではないかと。
主人公「舞」がなにをしたいのかわかりにくい
優柔不断、他力本願、なんていう感想を書いている方々がいてそんなふうに見えるのか?と考えましたが、たしかに舞は多くの人々に助けを求めています。
自分の力では解決できないことでもなんとかしたい、と行動に移して多くの人々を巻き込んだり、周りから反対したとしても「終わりにしたくない」という想いで行動します。
が、才能とか特技があるわけではない舞は殆どの場合周囲の方々に助けてもらうのです。
ここだけ切り取ると、言いたいこととかやることもコロコロ変わって、イラッとするかもしれません。しかし、世の中ってそんなものだしこの舞の行動がなければ、物語における各ポイントとなる窮地はそのまま「共倒れ」という形になり、いずれが欠けていても最後の「空飛ぶクルマ」に繋がらないはずでありあのラストこそ「自分だけではなく、周囲を巻き込んで変わり続ける生存能力」を持つ舞は非常に主人公らしく、面白いなと思えました。
舞の想いだけではなく、様々な想いを受け継いで、支え合って、なおかつ「変わり続ける主人公」は分かりやすい特技を持っているわけではないけれど、彼女が行ってきた「変わり続ける」という行動が最初から最後に繋がる物語であり、変わり続けることができたのは一強にならずに周囲と一緒に「仕事や目的を分散しながら成長していった」、まさに「舞いあがれ」という想いを中心にしたDAOのような機能が働いたからこそ、あの感動のラストに繋がるのです。
まとめ:変化を拒絶する人は舞いあがれを不評とする
分かりやすい、ある種の王道パターンから外れた「舞いあがれ!」は普段ドラマをみない僕を虜にし、ドラマでこんな物語が描けるのか、と驚きました。
一方でこの作品の不評がたくさん出るというのは、後々評価されるドラマなのかな?と思ったりもします。現実的かどうかは関係ありません。なぜならこれはドラマだから。
主人公、舞はどんなドラマを起こしたのか、しっかりと見てあげるべきかなと思います。
そうでなければ序盤、病弱な舞をどうしようもできず、無茶はさせない、迂闊なことはしないという判断をしかけた母のように公開することになりかねません。