中小企業から「ホームページを作りたい」と相談を受けたらやることリスト

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こんにちは!
今日は「中小企業から“ホームページを作りたい”と相談を受けたら、何からどう始めるの?」というテーマで、現場でそのまま使える“やることリスト”をまとめたいと思います。提案の型、ヒアリングの問い、法務やSEO、アクセシビリティまで、最初の一歩から運用までを一気にまとめます。

要約

  • 「誰のためのホームページか」を最初に握ると、後工程がラクになります。
  • 見積は“スコープ×体制×リスク”の3点で考えるとブレにくいです。
  • Core Web Vitals(LCP/CLS/INP)やWCAGを“最低ライン”に据えておくと品質が安定します。
  • 日本の法令は「特商法表示」「個人情報保護法(APPI)」「クッキー運用の方針」を早めに方針化すると後戻りが減ります。
  • リリース後の“運用KPI→月次レポート→改善”を契約に入れておくと、成果が積み上がります。

はじめに:よくある“つまずきポイント”を先回りします

「ホームページが必要なんです。まずはデザインを…」という相談はよくあります。ここでいきなりカンプに走ると、目的が曖昧なままスケジュールだけが進んでしまいます。あとから「採用が主目的でした」「多言語が要りました」が出てきて、手戻りが起きやすいです。なので最初は“Why/What/When/How much”の4点セットで、数字と日付と予算を仮置きします。これは面倒に見えて、結局いちばんの近道です。


0)事前準備:相談前に“型”を用意しておきます

  • 相談の目的・背景の仮説メモを作ります。業界、競合、採用状況、問い合わせの季節性など、ざっくり仮説で十分です。
  • 自社の提案フォーマットと見積テンプレを用意します。ページ一覧、機能要件、体制、スケジュール、リスクと想定対策を1スライドで説明できると強いです。
  • RACI(責任分担表)を説明できる資料も1枚作っておくと、後で“誰が決めるか”で迷いません。RACIはResponsible/Accountable/Consulted/Informedの略で、役割の線引きを明確にする道具です。

1)ヒアリング(Why/What/When/How much)

  • 目的・KPI:問い合わせ件数/月、採用応募数、資料DL数など、必ず数字で握ります。“ゼロ→1”なのか“1→10”なのかで手の打ち方が変わります。
  • 期限:希望公開日、撮影日、法務レビュー日、DNS切替日などのマイルストーンを置きます。
  • 予算レンジ:初期費用と月額運用を分けて聞きます。SaaSや広告費、写真素材費も入るか確認します。
  • ターゲット・ペルソナ:意思決定者と現場利用者が異なるケースを想定します。BtoBなら発注フローを簡略図にしておくと良いです。
  • 競合/参考サイト・好き嫌い:UIだけでなく、構造やCTAの強さの観点で好みを掘ります。
  • 社内更新の要否・頻度・担当者スキル:CMSの選定基準に直結します。
    こうして“狙う成果・期限・費用・顧客像・運用力”をひとつの紙にまとめます。ここが合意できれば半分終わりです。

2)現状資産の棚卸し

  • ドメイン/サーバ/メール:契約者名義やログイン権限を必ず確認します。
  • ロゴ・CI、写真/動画、既存テキスト、会社案内:再利用可否と画質、権利(社外カメラマンの契約)をチェックします。
  • 法務文書:規約、プライバシーポリシー、クッキーポリシーの有無を確認します。後で触れますが、日本ではAPPI(個人情報保護法)に基づく表示や運用が前提になります。

3)体制・契約まわり

  • 決裁者/窓口/RACIを確定します。窓口は1名にすると意思決定が早いです。
  • 契約形態(請負/準委任)、検収条件、支払条件を明確化します。
  • 著作権/素材ライセンス/再委託範囲:写真やアイコンのライセンスは“改変・商用・二次使用”の可否まで明記します。

4)スコープ定義 & 概算見積

  • ページ群:トップ、事業、実績、会社情報、採用、問い合わせなど、画面一覧に落とします。
  • フォーム要件:項目、通知先、スパム対策(reCAPTCHAやhCaptchaの採用、しきい値)を決めます。
  • 追加機能:多言語、ブログ、ニュース、検索、会員、資料DL、タグ付け等。
  • 初期費用/運用費:保守、ホスティング、CDN、監視、更新代行を分けて積算します。
    “できることリスト”ではなく“やらないことリスト”も明記すると、後工程が静かになります。

5)情報設計(IA)/サイトマップ

  • ナビゲーション構造:ユーザー導線とCTA(例:資料請求・見積依頼・採用エントリー)を最短で結ぶ設計にします。
  • 画面一覧・ワイヤーフレーム:主要ページはファーストビューで“価値・証拠・次の一歩”を並べます。抽象→具体→行動の三拍子が効きます。
  • 検索導線:ブログや事例はカテゴリ・タグ・内部リンク方針を先に決めます。

6)コンテンツ計画

  • ページごとの目的と見出し構成を決めます。
  • コピーライティング方針:トンマナ、証拠(実績・数値・顧客の声)を集める段取りをつくります。
  • 撮影/素材調達:人物・職場・製品の写真は“信頼”に効きます。BtoBなら設備や作業風景の写真が刺さりやすいです。
  • E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を意識して、担当者名や所在地、実績の一次情報を出す設計にします。Googleは“人の役に立つ内容か”を重視するため、作り話ではなく現場の知見を載せます。

7)ブランド/デザイン方針

  • カラーパレット・タイポグラフィ・UIコンポーネントの基準を決めます。
  • レスポンシブとアクセシビリティを前提に、フォーカス可視やコントラストを早期に確認します。WCAG 2.2ではフォーカスの見え方や操作容易性に関する基準が追加されています。

8)SEO 基本設計

  • キーワード仮説→競合SERP観察→情報ニーズの整理を行います。
  • タイトル/メタ/構造化データ/内部リンクの方針を決めます。
  • 会社情報(住所・地図・代表者・沿革)と実績ページで信頼性を補強します。
  • Core Web Vitals(LCP/CLS/INP)をKPIに含めます。INPは2024年3月にFIDの後継として正式採用されました。
  • Search Centralのスターターガイドと“People-first”の考え方に沿って、過剰なテクニックではなく、役に立つ内容を積み上げます。

9)アクセシビリティ(WCAG 2.2)

  • 見出し階層、代替テキスト、フォームラベル、コントラスト、キーボード操作、フォーカス可視をチェックします。
  • 動画の字幕や自動再生制御も配慮します。
  • 最低でもAAに照準を合わせ、デザイン初期から考慮します。公式の2.2仕様と“何が新しいか”の概要を参照し、チェックリスト化します。

10)法務・コンプライアンス

  • プライバシーポリシーとクッキー同意の方針:日本のAPPI(個人情報保護法)ではクッキー自体が即“個人情報”とは限りませんが、第三者提供や“個人関連情報”の扱いでは同意や確認が論点になります。迷ったら弁護士確認を組み込みます。
  • 特定商取引法表記(EC/有料サービスがある場合)は所管官庁の指針を参照し、表示義務を満たします。
  • 会社情報・免責・著作権表示も整えます。ここは後回しにすると公開直前で詰まります。

11)CMS/更新運用設計

  • CMS選定:STUDIO/WordPress/ヘッドレス/microCMSなど、運用者のスキルと権限要件で選びます。
  • 権限・承認ワークフロー・下書き→公開の流れを決めます。
  • 編集ガイドと運用マニュアルを最初に作り始めると、公開後の混乱が減ります。

12)技術選定・基盤

  • ホスティング(静的/マネージドWP/VPSなど)とSSL/TLSは必須です。
  • CDN/WAF/バックアップ/監視(死活・エラーログ)を“運用費”に含めます。
  • パフォーマンス目標:
    • LCP ≤ 2.5s、CLS ≤ 0.1、INP ≤ 200ms を目安にします(“良好”のしきい値)。
  • 画像最適化:WebP/AVIF、遅延読み込み、適切なサイズの出し分けなどを標準化します。
  • 将来の拡張(多言語や会員機能)を見据え、API設計や認証方式を先に決めます。

13)計測設計

  • GA4/タグマネージャ/Search Console を導入します。GA4のプロパティ作成→データストリーム→タグ実装、GTMでイベントを管理、Search Consoleでインデックス状況を監視します。
  • 重要イベント/コンバージョン定義:問い合わせ送信、資料DL、電話タップなどを“計測テーブル”に整理します。
  • UTM運用ルール、サンクスページ or イベントでの計測確認を行います。
  • Core Web VitalsのレポートもSearch Consoleで継続監視します。

14)制作(デザイン→実装)

  • デザインカンプ/プロトタイプを承認し、UIコンポーネントを再利用設計します。
  • アクセシビリティ実装:適切なalt、ラベル、フォーカスリングを反映します。
  • メタ設定:タイトル、description、OGP、構造化データを埋め込みます。
  • 画像書き出しは“Web向け最適化+代替テキスト”セットで運用に引き継ぎます。

15)テスト/品質保証

  • 主要端末/ブラウザ検証、レスポンシブ表示を確認します。
  • フォーム送信・バリデーション・スパム対策:reCAPTCHA v3/hCaptchaのスコア確認としきい値調整を行います。
  • 404/500ページ、robots.txt、sitemap.xml、noindexの有無を点検します。robots.txtの位置と役割はSearch Centralのガイドに沿います。
  • パフォーマンス計測(LCP/CLS/INP)とアクセシビリティ簡易監査を行い、数値で改善します。

16)リリース準備

  • DNS切替手順、ロールバックプラン、関係者周知を整えます。
  • キャッシュ・リダイレクト設定、初期監視(エラーログ/アラート)を用意します。
  • 社内向け操作レクチャー、連絡チャネル(Slack/メール)を決めます。
  • Search Consoleにサイトを登録し、robots.txtやサイトマップの検出状況を確認します。

17)運用・改善

  • 更新カレンダー(ニュース/事例/採用/ブログ)を月次で回します。
  • KPIモニタリング→月次レポート→改善施策のPDCAを契約内に組み込みます。
  • 保守(バックアップ/脆弱性対応/証明書更新)を忘れずに回します。
  • “人の役に立つ”を軸に、E-E-A-Tの観点で一次情報を継続的に追加します。

付録:最初に用意しておくと早いドキュメント

  • ヒアリングシート / RFP(目的・KPI・期限・予算・体制・既存資産・禁止事項)。
  • サイトマップ & 画面一覧(RACI列を付けて“誰が決めるか”を同時管理)。
  • ワイヤーフレーム(ファーストビューに“価値・証拠・CTA”の順)。
  • 計測設計書(KPI・コンバージョン・イベント・GTM設計・検証手順)。
  • 運用マニュアル(CMS更新手順・権限ルール・公開フロー・緊急時連絡手順)。

よくあるアドバイスへの小さな疑問と、現実解

  • 「まずは格安で作って、後で育てましょう」
    ありがちな提案ですが、要件未定のまま着手すると後で“育成費”が膨らみがちです。最初にKPIと計測、運用体制まで決めておくと育成が現実になります。
  • 「デザイン命です」
    見た目は大事ですが、成果は“導線×コンテンツ×速度”の掛け算です。Core Web Vitalsやアクセシビリティの“最低ライン”を先に決めると、デザインの方向も定まります。
  • 「SEOは外注にお任せで」
    人の役に立つ一次情報は現場にしかありません。E-E-A-Tの観点で“だれが経験を書き、だれがレビューし、どの証拠を載せるか”をワークフロー化すると、検索も問い合わせも安定します。

というわけで:今日から動けるチェックリスト(簡易版)

  • 目的・KPI・期限・予算・体制(RACI)を1枚にまとめます。
  • サイトマップと画面一覧→ワイヤー→概算見積を作ります。
  • 法務方針(APPI/特商法/クッキー)を弁護士確認ラインとセットで決めます。
  • 計測(GA4/GTM/Search Console)とCore Web Vitals目標を先に置きます。
  • WCAG 2.2 AAの要点をデザイン初期から反映します。
  • フォームのスパム対策と監視の導線を最初から確保します。

まとめ:明確な“正解”より、回る“仕組み”を一緒につくる

中小企業のサイト制作は、きれいなサイトを作ることがゴールではありません。社内の更新体制と計測の仕組みをセットにして、問い合わせや採用応募という“行動”を着実に生むことが目的になります。とはいえ、最初から完璧を狙うと固まります。今日お伝えしたチェックを“最低ライン”として軽やかに進めて、公開後に小さく改善していくのがいちばん現実的だと思います。小さな一歩から始められると、きっと楽になります。


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